採卵を終えた方の中には、「エコーでは卵胞が複数見えていたのに1個しか取れなかった」「卵子1個で本当に妊娠できるの?」と不安を感じている人も多いでしょう。
先に結論を述べると、採卵で得られた卵子が1個だけでも、受精から胚盤胞へと育ち妊娠・出産に至ったケースは国内外で数多く報告されています。
この記事では、採卵で1個しか取れなかった原因や卵子1個から妊娠へ進む可能性、次回の採卵に向けて見直したいポイントまで分かりやすく解説するので、ぜひ参考にしてください。
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江川 美穂
不妊治療の専門家兼NPO法人日本不妊カウンセリング学会認定の不妊カウンセラー。大学卒業後、不妊治療に興味を持ち、不妊治療を研究している医療機関を徹底的に調査して分析。自身も不妊治療を経験し、現在は一児の母。

原田 美由貴
自身も不妊治療を経験。「子どもを授かりたい」という強い思いから、不妊治療に特化した数多くの医療機関を受診。体外受精やホルモン治療など、さまざまな治療法に取り組んできた実体験をもとに、不妊に悩む方々に寄り添う記事を執筆。現在は二児の母。
採卵で1つしか取れなかった…妊娠できる?
採卵数が多いほど移植できる胚を得られる機会は増えるため、採卵数が結果に影響しないわけではありません。
しかし、採卵できた卵子が1個だけでも、その1個が順調に成長すれば妊娠・出産につながる可能性はあります。そのための条件をここで確認しておきましょう。
- 採れた卵子が成熟卵(MⅡ卵)である
- 正常受精が確認できる
- 移植可能な胚まで順調に育つ
- 子宮内膜など、移植を受け入れる環境が整っている
一方で、1個の卵子が移植可能な胚へ育つまでには、成熟・受精・培養といった複数の段階があります。途中で発育が止まると、その周期は移植に進めないため、各段階を通過する割合も確認しておきましょう。

| ステップ | 目安となる割合 | ポイント |
|---|---|---|
| 採卵→成熟卵 | 約70〜80% | 未成熟卵はそのままでは受精に用いられないことがある |
| 成熟卵→正常受精 | 約60〜80% | 受精方法や卵子・精子の状態によって異なる |
| 受精卵→胚盤胞 | 約30〜50% | 年齢や培養条件などによる差がある |
| 移植→妊娠 | 約20〜45% | 年齢や胚、子宮内膜の状態などで変動する |
このように、採卵した卵子がすべて受精し、胚盤胞まで育つわけではありません。特に採卵数が1個の場合は、その卵子が途中の段階を通過できるかどうかが、移植に進めるかを左右します。
さらに、胚盤胞まで育った後の妊娠率や出産に至る割合も年齢によって異なります。年齢別にみた胚移植あたりの目安は以下の通りです。


| 年齢 | 移植あたりの妊娠率 | 移植あたりの生産率(出産に至る割合) |
|---|---|---|
| 30〜34歳 | 約45% | 約35% |
| 35〜37歳 | 約40% | 約30% |
| 38〜39歳 | 約35% | 約25% |
| 40〜41歳 | 約30% | 約17% |
| 42歳以上 | 約20% | 約8% |
このように、1回の採卵で得られた卵子が1個だったからといって、妊娠できないと判断する必要はありません。
治療方針によっては採卵を複数回行い、移植できる胚を確保する方法もあるため、年齢や卵巣の状態、これまでの治療結果を踏まえて医師と今後の進め方を相談しましょう。
採卵で卵が取れない原因
ここからは、採卵がうまく進まないときに考えられる代表的な3つの原因を紹介します。
- 採卵個数が少ない
- 受精障害
- 胚発育不良・グレード不良
それぞれ詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
採卵個数が少ない
1つ目は「採卵個数が少ない」です。
エコーで卵胞が複数確認できていても、実際に採卵できる卵子が1個だけの場合もあります。採卵数が少なくなる主な原因は以下の通りです。
- 加齢による卵巣予備能の低下
- 刺激法が体質に合っていない
- 採卵前に排卵してしまった
- 卵胞内に卵子がない(空胞)
→ 解説記事:採卵で空胞ばかりは改善する? - 癒着などで卵胞に針を刺せない卵胞がある
特に、加齢による卵巣予備能の低下はAMHの低下にもつながります。AMHが低い場合は、刺激を強くしても育つ卵胞が増えにくく、採卵数が少なくなる可能性が高いです。
とはいえ、採卵数が少ない場合でも刺激法を変更することで採れる卵子が増える可能性があるので、担当医に相談してみましょう。
受精障害
2つ目は「受精障害」です。
受精障害は、体外受精や顕微授精を行った卵子が受精に至らない状態で、卵子側・精子側のどちらにも要因が考えられます。
主な受精障害の例は以下の通りです。
- 卵子側:透明帯が硬い、卵子活性化障害、未成熟卵だった
- 精子側:運動率や形態の異常、受精を促す因子の不足
- その他:培養環境、媒精方法とのミスマッチ
顕微授精を行っても受精が確認できない完全受精障害の場合は、卵子活性化処理などの検討が必要です。
受精しなかった原因は培養室の記録に残っているため、次の周期の方針を決める前に、どの段階で止まったのかを必ず確認しておきましょう。
胚発育不良・グレード不良
3つ目は「胚発育不良・グレード不良」です。
受精が成立しても途中で分割が止まってしまったり、胚盤胞まで到達できずに移植を見送ったりするケースがあり、これを胚発育不良と呼びます。
受精後の胚は成長段階や形態によって評価され、初期胚と胚盤胞では主に以下の分類方法が用いられるのが一般的です。
- Veeck分類:初期胚を対象に、割球の均一性やフラグメントの量を評価する方法
- Gardner分類:胚盤胞を対象に、拡張度や内細胞塊・栄養外胚葉の状態を評価する方法
受精卵が胚盤胞まで育つ割合はおよそ3〜5割程度とされており、前述の通り年齢が上がるほど到達率は下がる傾向にあります。
ただし、胚の発育が思わしくなかった場合でも、培養日数や凍結のタイミングを見直したり、初期胚移植へ切り替えたりするなど、治療方針を調整できる場合があります。
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採卵で1個しか取れない原因は?見直したいポイント
ここでは、採卵がうまくいかないときに見直したい4つのポイントを紹介します。
- 自分に合った排卵誘発法か確認する
- これまでの採卵結果を振り返る
- 担当医に治療方針を相談する
- 必要に応じてセカンドオピニオンを検討する
それぞれ順番に解説していきます。
自分に合った排卵誘発法か確認する
1つ目は「自分に合った排卵誘発法か確認する」です。
排卵誘発法には薬の使い方によっていくつかの種類があり、使用する薬や刺激方法を変えることで、採卵結果が変わる場合があります。
- 高刺激法:注射で多数の卵胞を育てる方法で、卵巣予備能が保たれている方に向いている
- 低刺激法:内服中心で体への負担を抑えやすく、採卵数が伸びにくい方に向いている
- 自然周期:薬をほぼ使わず1個の卵子の採卵を狙う方法で、薬への反応が乏しい方に向いている
採卵数が少ない場合でも、高刺激で卵胞を多く育てる方法が適している方もいれば、低刺激で少数の卵胞を育てる方法が適している方も少なくありません。
どちらが合うかは卵巣の状態や薬への反応によって異なるので、必ず担当医と相談しながら進めてください。
これまでの採卵結果を振り返る
2つ目は「これまでの採卵結果を振り返る」です。
周期ごとの数値を並べて比較すると、どの段階でつまずいているのかが見えやすくなり、次に取るべき対策を医師と共有しやすくなります。具体的には、次の項目を周期ごとに記録しておくと、採卵結果を振り返りやすいです。
- 使用した薬剤の種類と量
- 採卵前の卵胞数とホルモン値
- 採卵数と成熟卵の数
- 受精方法と正常受精の数
- 胚盤胞到達数とグレード
特に採卵数と成熟卵数のギャップが大きい場合は、トリガーのタイミングや採卵までの時間を調整すると、採卵結果が改善するケースもあります。
私も採卵後の診察で「培養結果報告書」を受け取りました。報告書には最終的に凍結できた卵子の数だけでなく、凍結できなかった卵子の内訳(未成熟卵子・変性卵子)も記載されていて、どの段階で数が減ったのかが一目で分かりました。


未成熟卵が多かった方は、採卵で未成熟卵ばかりの原因は?も参考にしてください。
担当医に治療方針を相談する
3つ目は「担当医に治療方針を相談する」です。
同じ方法で採卵を繰り返しても結果が変わらない場合は、次の周期の治療方針を医師に確認しておくと、納得したうえで治療を進めやすくなります。
診察の時間を有効に使えるよう、あらかじめ以下の内容を確認しておくと相談しやすいでしょう。
- 今回うまくいかなかった原因の見立て
- 次周期で変更する点があるか
- 刺激法を変える選択肢はあるか
- 追加で受けたほうが良い検査
- 今後の見通しとおおよその費用
診察時間は限られているため、質問したい内容を事前にメモへ書き出しておくと、短い時間でも要点を押さえた相談ができますよ。
必要に応じてセカンドオピニオンを検討する
4つ目は「必要に応じてセカンドオピニオンを検討する」です。
治療方針に納得できないまま周期を重ねると心身の負担が大きくなるので、必要に応じてセカンドオピニオンを検討するのもおすすめです。
セカンドオピニオンを受ける際は、これまでの検査結果や培養成績の記録を持参すると、限られた時間でも具体的な助言を得やすくなるでしょう。
転院については、産婦人科の転院は紹介状なしでできる?で解説しています。
採卵で1つしか取れなかったら一度休んでもいい?
採卵や移植を繰り返しても結果が出ないと、通院や自己注射を続けること自体がつらくなり、治療を休みたいと感じる方も少なくありません。
ここでは、治療をお休みする際に知っておきたい3つのポイントを紹介します。
- 心身の負担が大きい場合は休む選択肢もある
- 不妊治療を休む期間はどのくらい?
- 治療を休む前に医師へ確認しておきたいポイント
それぞれ詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてください。
心身の負担が大きい場合は休む選択肢もある
不妊治療は結果が見えにくいまま通院と投薬が続くため、気持ちの落ち込みや疲労が積み重なりやすいという特徴があります。
眠れない日が続いたり仕事との両立が難しくなったりしている場合は、一度立ち止まって体調を整えることも前向きな選択のひとつです。
実際に、採卵を数周期お休みしてから治療を再開し、気持ちの余裕を取り戻せたという声も多くあります。
不妊治療を休む期間はどのくらい?
お休みの期間に決まりはありませんが、体調や気持ちを整える目的であれば1〜3周期程度を目安にする方が多いと言われています。
一方で、卵巣の機能は年齢とともに変化していくため、長期間空けると不利に働く可能性がある点は理解しておきましょう。
私は卵子凍結の採卵後に卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を発症し、お腹の張りや息苦しさで仕事に支障が出た時期もありました。正直、すぐにもう一度採卵したいという気持ちにはなれませんでしたが、卵子の質は年齢とともに変化していくため、「35歳までにもう一度だけ挑戦しよう」と期限を決めて考えています。
治療を休む際は、再開に向けて心身の状態を整えるためにも、以下のような過ごし方を意識するのがおすすめです。
- 睡眠時間と生活リズムを整える
- 栄養バランスの良い食事を意識する
- 入浴や運動で冷え対策を行う
- パートナーと今後の方針を話し合う
また、休んでいる間もタイミング法は続けられるので、医師と相談しながら無理のない範囲で妊娠の機会を保つと良いでしょう。
治療を休む前に医師へ確認しておきたいポイント
お休みに入る前に手続きや期限を整理しておくと、再開するときに慌てずに済み、余計な費用や時間のロスも防ぎやすくなります。
- 凍結胚・凍結卵子:保管期限と更新手続きの時期
- 検査の有効期限:再開時に再検査が必要になるもの
- 保険適用の回数:残っている回数と年齢の条件
- 再開の手順:受診のタイミングと予約方法
不妊治療の保険適用には年齢と回数の条件が設けられているため、残りの回数を把握したうえで休む期間を決めることが大切です。
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採卵で取れなかった(0個)|EFSについて
採卵を行ったにもかかわらず卵子が1個も回収できない状態は空卵胞症候群(EFS)と呼ばれ、体外受精を受ける方の数%程度に起こるとされています。
エコー上では卵胞がしっかり育っているように見えるため、当日に説明を受けて強いショックを受ける方も少なくありません。
EFSは原因によって2つのタイプに分けられており、それぞれ次周期に向けた対応が異なります。
- 偽性EFS:トリガーの打ち忘れ・吸収不良・投与時刻のずれが主な原因
→ 次周期では投与方法や採卵時間の調整が必要になる - 真性EFS:卵胞内に卵子が存在しない・卵胞発育の異常が主な原因
→ 次周期では刺激法の変更や追加検査が検討される
なお、1回EFSが起きたからといって毎回同じ結果になるとは限らず、次の周期では複数個の卵子が採れた例も報告されています。
採卵で卵子が得られなかったときこそ、原因の見立てと次周期の変更点を医師に確認し、同じ条件で繰り返さないようにするようにしましょう。
採卵で1個しか取れない原因に関するよくある質問
採卵で1つしか取れなかった場合の考え方【まとめ】
採卵で得られた卵子が1個だけでも、成熟卵として受精し良好な胚に育てば妊娠・出産の可能性は残されています。
大切なのは1回の結果だけで判断せず、どの段階でつまずいたのかを記録から確認し、次周期の方針を医師と一緒に組み立てることです。
心身の負担が大きいときは一度治療をお休みする選択肢もあるので、残っている治療回数や凍結胚の期限を確認しながら無理のないペースを探してみてください。
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