採卵周期は排卵誘発剤やトリガー注射の影響を受けるため、普段とはホルモンバランスが異なります。そのため、生理が始まる時期や出血の仕方がいつもの周期と違う場合があります。
実際、採卵を終えたあとに「生理がいつ来るのか分からない」「予定していた時期を過ぎても始まらない」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、採卵後に生理が来るまでの日数の目安や早まる・遅れる原因を分かりやすく解説するので、採卵後の経過に不安を感じている方はぜひ最後までご覧ください。
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江川 美穂
不妊治療の専門家兼NPO法人日本不妊カウンセリング学会認定の不妊カウンセラー。大学卒業後、不妊治療に興味を持ち、不妊治療を研究している医療機関を徹底的に調査して分析。自身も不妊治療を経験し、現在は一児の母。

原田 美由貴
自身も不妊治療を経験。「子どもを授かりたい」という強い思いから、不妊治療に特化した数多くの医療機関を受診。体外受精やホルモン治療など、さまざまな治療法に取り組んできた実体験をもとに、不妊に悩む方々に寄り添う記事を執筆。現在は二児の母。
採卵後の生理はいつ来る?
通常、生理は排卵からおよそ14日後に始まりますが、採卵後の生理は採卵日からおよそ1〜2週間後に始まるケースが多いです。
これは、採卵周期では黄体機能が低下して黄体期が短くなるためです。
黄体期(おうたいき)
排卵が終わってから次の月経(生理)が始まるまでの約2週間(10〜14日間)の期間
ただし、生理が来るタイミングは全胚凍結か新鮮胚移植か、そして黄体ホルモンの補充を行っているかどうかによって変わります。治療内容別の生理が来るまでの日数は、以下を参考にしてください。
| 治療内容 | 生理が来るまでの目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 全胚凍結 (移植なし) | 採卵から7〜14日 | 黄体期が短縮し早まりやすい |
| 新鮮胚移植 (妊娠に至らず) | 採卵から14日前後 | 判定日前後に出血しやすい |
| 黄体ホルモンの 補充あり | 薬の終了後2〜7日 | 薬を止めると消退出血が起こる |
| GnRHアゴニストトリガー | 採卵から5〜10日 | 黄体機能が低下し早まりやすい |
黄体ホルモンの補充中は生理が始まりにくいので、薬をいつまで使用するのか確認しておくと、次の周期を把握しやすくなりますよ。
なお、採卵当日から数日間続く少量の出血は、採卵針を刺した腟の傷から出ているもので、生理による出血ではない場合がほとんどです。
採卵後にすぐ生理が来る原因
前の章でも述べたように、採卵後に生理が早く来やすいのは、黄体機能が低下するためです。
黄体機能が低下する背景には、採卵による卵巣への刺激と、排卵誘発によるホルモンバランスの変化が関係しています。具体的な理由について、ここで確認していきましょう。
- 排卵誘発によってLHの分泌が抑えられ、黄体を支えるホルモンが出にくくなるため
- 採卵時に卵胞液と一緒に、黄体のもとになる顆粒膜細胞も吸引されてしまうため
- 複数の卵胞が育つことで女性ホルモンの分泌量が増え、ホルモン環境が大きく変化するため
- トリガーにGnRHアゴニストを使うと、黄体機能が低下しやすくなるため
特にGnRHアゴニストをトリガーに使用した周期では、黄体機能が低下しやすい傾向があり、採卵から1週間前後で生理が始まる場合もあります。該当する場合は、いつ生理が来てもいいように準備をしておきましょう。
採卵後に生理が来ない原因
採卵後の生理は、体質や治療内容によって予定より遅れる場合もあります。
ここからは、採卵後の生理が遅れる原因を解説していきます。
- 卵巣の回復が遅れている
- 精神的・身体的なストレス
それぞれ順番に解説するので、ぜひ参考にしてください。
卵巣の回復が遅れている
1つ目は「卵巣の回復が遅れている」です。
採卵では複数の卵胞に針を刺して卵胞液を吸引しますが、卵子を取り出したあとの卵胞はそのまま消えるわけではなく、それぞれが「黄体」というプロゲステロンを分泌する組織に変わります。
自然周期では黄体は1つしかできませんが、採卵後は刺した卵胞の数だけ黄体ができるため、卵巣が大きく腫れた状態になります。
生理はプロゲステロンが下がることで起こるので、黄体が多く残って働き続けているあいだは、子宮内膜が剥がれず生理が来ません。特に以下に当てはまる方は、黄体が長く残りやすく、卵巣の回復に時間がかかるとされています。
- 高刺激法で採卵数が多かった
- 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と診断された、腹部の張りが強い
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)がある
- もともと生理周期が不規則になりやすい
- 遺残卵胞が残っていると指摘された
特に採卵数が多かった方やOHSSの傾向がある方は、卵巣の腫れが長引き、次の生理が始まるまでに2週間以上かかるケースも珍しくありません。
また、多嚢胞性卵巣症候群の方はもともと排卵が起こりにくく周期が長くなりがちなので、採卵後の生理が普段より遅くなる場合があります。
精神的・身体的なストレス
2つ目は「精神的・身体的なストレス」です。
生理周期は脳の視床下部と下垂体から出るホルモンによってコントロールされており、強いストレスが続くと視床下部の働きが乱れて排卵が遅れる場合があります。
採卵は通院回数も費用負担も大きく、結果を待つ緊張感や仕事との両立による疲労が重なりやすいため、自覚しないまま心身の疲れがたまっている方も少なくありません。
「最近ちょっと疲れているかも」という方は、以下の点を意識してみてください。
- 睡眠は6〜7時間を確保し、就寝時刻をできるだけ一定にする
- 食事ではたんぱく質・鉄・ビタミンDを意識して摂る
- ホルモン分泌を乱さないよう、急激な体重の増減を避ける
- 入浴や衣服で体を温め、冷やしすぎないようにする
- 気持ちに余裕がないときは、治療を1周期休む選択肢も視野に入れる
採卵後は無理をせず、まずは生活リズムを整えましょう。
採卵後の生理の特徴
採卵後の最初の生理は、来る時期だけでなく、出血量や痛みの強さが普段と異なる場合もあります。
ここからは、採卵後の生理の特徴について解説していきます。
- 出血が多い
- 生理痛がひどい
- 期間が長い
それぞれ詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてください。
出血が多い
1つ目は「出血が多い」です。
卵巣刺激によって複数の卵胞が育つと、女性ホルモンの分泌量が増え、子宮内膜が自然周期より厚くなります。その結果、生理の際に排出される内膜も増え、経血量が多くなる場合があります。
1時間ごとにナプキンを交換しなければいけないほどの大量出血や、立ちくらみ・動悸をともなう場合は貧血の可能性があるので、早めにクリニックへ連絡しましょう。
生理痛がひどい
2つ目は「生理痛がひどい」です。
子宮内膜が厚いほど剥がれ落ちる際に子宮が強く収縮するため、出血量が多い周期では生理痛も強くなりやすいとされています。
また、採卵後は卵巣の腫れや違和感が残っている場合があり、生理痛と重なると下腹部の痛みをより強く感じるかもしれません。
生理痛がひどいときは、お腹や腰を温め、締めつけの少ない服装にするようにしてください。また、痛みが強い日は無理をせず、体を休ませることを優先しましょう。
期間が長い
3つ目は「期間が長い」です。
採卵後の生理では、厚くなった子宮内膜が剥がれきるまでに時間がかかり、普段より1〜2日長く出血が続くケースもあります。
また、黄体ホルモンの補充を行っていた場合は、薬を中止した直後に消退出血が起こります。この出血がそのまま生理へと続くため、「生理が長い」と感じる方もいるでしょう。
消退出血
ホルモン量の低下により子宮内膜が剥がれて起こる出血
一般的な生理期間は3〜7日程度とされているため、8日以上出血が続く場合は受診するようにしてください。
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採卵後に生理が来ないときの受診目安
採卵後は自然周期と条件が異なるので、「何日来ていないか」だけで卵巣やホルモンの状態を自分で判断することはできません。
そのため、日数はあくまで「いつクリニックに相談するか」の目安として使い、実際の状態は診察で確認してもらうのが安心です。
| 採卵からの日数 | 生理が来ない場合の対応 |
|---|---|
| 〜14日 | 様子を見て問題ないことが多い |
| 15〜21日 | 妊娠検査薬を使い、クリニックへ相談 |
| 22日以上 | 受診してホルモン値と卵巣の状態を確認 |
上記のように、採卵から2週間経っても生理が来ない場合は一度クリニックへ相談すると良いでしょう。
- 1時間ごとにナプキンを交換するほどの出血
- 強い腹痛や吐き気、発熱をともなう
- 急にお腹が張って体重が増えた
- 尿量が減る、息苦しさを感じる
- 8日以上出血が止まらない
採卵後の生理に関するよくある質問
採卵後の生理は個人差が大きい【まとめ】
採卵周期では黄体機能が低下しやすく、生理が普段より早まることが多いです。採卵からおよそ1〜2週間後を目安とし、準備を整えておきましょう。
ただし、卵巣の回復状況やストレスの影響で反対に遅れることもあります。また、出血量が増え、生理痛が強くなる方も多いようです。
採卵から2週間経っても生理が来なかったり、大量の出血・強い腹痛があったりする場合は自己判断で待たず、早めにクリニックへ連絡して状態を確認してもらいましょう。
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