35歳で妊活されている方、これから妊活や不妊治療を始める方の中には、本当に妊娠できるか不安に感じている人も少なくないでしょう。
実際、妊娠のしやすさや不妊治療の成功率は、年齢と共に徐々に低下すると言われています。そのため、妊活や不妊治療を始める際には、妊娠に関する正しい知識を持ち、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
この記事では、35歳の自然妊娠率や不妊治療の成功率、流産リスクなどをまとめて解説していきます。妊娠に向けた一歩を踏み出すために、是非参考にしてくださいね。
35歳からの妊娠率と日本の平均初産年齢の関係性
日本では、第1子を出産する平均年齢が年々上昇しています。
厚生労働省の「令和4年(2022)人口動態統計」によると、2022年の平均初産年齢は30.9歳でした。1975年には25.7歳だったため、この約50年間で5.2歳も上昇したことが分かります。
ただし、注意しておきたいのが、2022年に第1子を出産した女性のうち、25歳から34歳が約68%を占め、35歳以上での出産は全体の約22%と、比較的少なめであるということです。
出産年齢が全体的に上がっているとはいえ、妊娠のしやすさやリスクは年齢と共に変化します。
将来的に妊娠・出産を考えている方は、妊娠率や出産のリスクなどもしっかりと把握した上で、ライフプランを見直してみてはいかがでしょうか。
35歳の妊娠率・自然妊娠の確率
妊娠の確率は、年齢と共に下降していきます。ここからは、自然妊娠の確率や不妊治療の成功率、流産のリスクについて詳しく解説していきます。
- 35歳の自然妊娠の確率
- 35歳の不妊治療の成功率
- 35歳の流産率
順番に確認していきましょう。
35歳の自然妊娠の確率
35歳は妊娠率が変化し始める1つの節目と言われています。
海外の論文によると、20〜34歳までは妊娠のしやすさに大きな差は見られませんが、35歳以降は徐々に自然妊娠の確率が下がっていく傾向があるようです。
実際に、各年代の自然妊娠率を比較してみると、以下の通りになりました。
年代 | 妊娠確率 |
---|---|
20代 | 25~30% |
30~34歳 | 25~30% |
35~39歳 | 約18% |
40~44歳 | 約5% |
45歳以上 | 約1% |
表からも分かるように、34歳までの妊娠率は20代の妊娠率とそれほど変わりません。一方、35歳以上になると、妊娠率は緩やかに低下していく傾向があるのです。
最近は30代後半から不妊治療を始める方も増えており、不妊治療専門クリニックも増加しています。ただし、不妊治療を受けたからと言って100%妊娠できるとは限りません。
少しでも妊娠の確率を高めたいのであれば、早めに妊活を始めたり、不妊治療に進んだりすることが必要です。年齢に合わせた適切なサポートを受けるためにも、まずは一度専門医に相談してみてはいかがでしょうか。
35歳の不妊治療の成功率
自然妊娠の確率が35歳から低下するように、不妊治療の成功率も35歳以降で大きく低下し始めます。
実際に、日本産科婦人科学会が発表した「2022年体外受精・胚移植等の臨床実施成績」を確認してみると、35歳の不妊治療の成功率は以下の通りになりました。
治療法 | 成功率 |
---|---|
体外受精・胚移植法(IVF-ET) | 43.9% |
不妊治療1周期あたりの妊娠成功率 | 26.2% |
35歳の体外受精の成功率は、2022年のデータでは約43.9%と報告されています。これは他の年代と比べて低下傾向にありますが、適切なサポートや治療のタイミングによって、可能性を高めることは十分可能です。
35歳の流産率
日本産婦人科学会によると、35歳の不妊治療における流産率は21.5%とされています。一方、20歳から34歳までの平均流産率は19.1%です。(参照:2022年体外受精・胚移植等の臨床実施成績)
このことから、35歳の不妊治療における流産率はやや高いものの、大きな差はないということが分かります。
ただし、不妊治療における流産率は35歳を境に、徐々に増加していきます。36歳は22.9%、37歳は24.5%と、年齢が上がるにつれて流産のリスクは高まるため、早めに不妊治療を始めるのに越したことはありません。
35歳の妊娠確率は大きく下がる?その理由とは
前述したように、妊娠しやすい年齢は20~30代前半とされ、35歳からは妊孕性(妊娠する力)が徐々に低下します。
ここからは、なぜ35歳以降の妊娠率が下がるのか、その理由を2つ解説していきます。
- 卵子数の減少
- 卵子の質の低下
順番に確認していきましょう。
卵子数の減少
1つ目の理由は「卵子数の減少」です。
女性は生まれた時から卵子を持っており、その数はおよそ100万~200万個と言われています。しかし、卵子の数は年齢と共に減少していき、思春期には約30万~50万個、さらに35歳を過ぎる頃には急激に減少するのです。
卵子数が減少すると、妊娠しにくくなるだけでなく、閉経が早く訪れる可能性も出てきます。
閉経後は自然妊娠が非常に難しくなってしまいます。妊娠・出産を考えている方は、事前に血液検査(AMH検査)で卵子の数を調べ、自分の体の状態を確認してみてくださいね。
卵子の質の低下
2つ目の理由は「卵子の質の低下」です。
35歳を過ぎると、卵子が持つ染色体異常のリスクが増加します。
染色体異常を持つ卵子は、受精後に流産を引き起こす原因となることが多く、ダウン症のような遺伝的疾患を引き起こす場合もあります。
また、卵子の質が低下すると、自然妊娠の確率が低くなり、妊娠できた場合でも流産のリスクが高まるため、注意が必要です。
35歳の妊娠率を上げるなら不妊治療が有効|治療の4ステップとは
35歳から不妊治療を始める場合、おおよその流れは次の通りです。
- 一般不妊治療(タイミング法・排卵誘発剤の使用)を行う
- ①で半年以上妊娠に至らない場合、人工授精(AIH)を行う
- 体外受精(IVF)を行う
- 顕微授精(ICSI)を行う
上記のステップのうち、体外受精・顕微授精は、体内から取り出した卵子と精子を受精させ、子宮内に戻す「生殖補助医療(ART)」と呼ばれる不妊治療です。
特に、体外受精はタイミング法や人工授精に比べて高い妊娠率が期待できます。35歳から不妊治療を始めるのであれば、必要に応じて体外受精にステップアップするのもおすすめです。
35歳から妊娠はできる?今すぐの妊活・不妊治療が難しいなら卵子凍結の選択も
結婚や妊活のタイミングが難しい場合は、35歳前後で卵子凍結をする方法もあります。
卵子凍結は、卵子の老化を抑え、年齢が高くなってからも若い時の卵子で妊娠を目指せる手段です。卵子は年齢と共に数が減り、質も低下するため、30代前半での凍結を推奨されていますが、35歳でも十分に実施する価値があります。
ただし、35歳で凍結する場合、若年時に比べて採卵数が少なくなることが多い点には注意が必要です。
それでも、一度に複数個の卵子を採卵して凍結保存することで、将来の妊娠のチャンスを高める手助けになります。卵子凍結は妊娠を保証するものではありませんが、将来に備えて妊娠の可能性を残す手段として有効ですよ。
35歳の不妊治療にかかる費用はいくら?保険適用の有無を解説
2022年4月より体外受精や顕微授精は保険適用となり、治療費の負担は大きく軽減されました。不妊治療にかかる費用は治療内容によって異なりますが、一般的な自己負担額は以下の通りです。
治療内容 | 保険適用前(自己負担額) | 保険適用後(自己負担額) |
---|---|---|
初診・検査 | 約10,000~20,000円 | 約5,000~10,000円 |
排卵誘発剤の処方 | 約5,000~15,000円 | 約3,000~10,000円 |
人工授精(IUI) | 約30,000~50,000円 | 約10,000~15,000円 |
体外受精(IVF) | 約200,000~700,000円 | 約80,000~200,000円 |
顕微授精(ICSI) | 約350,000~700,000円 | 約150,000~250,000円 |
このように、初診や検査、排卵誘発薬などは比較的安価ですが、体外受精や顕微授精は高額になる傾向があります。
クリニックによっても費用は異なるため、事前にしっかりと確認し、不明な点があればカウンセリング時に相談してみてくださいね。
35歳の妊娠率を上げるためのポイント5選
35歳の妊娠率は決して高いとは言えないものの、いくつかのポイントを意識することでその確率を上げられます。ここからは、妊娠率を上げるための5つのポイントをご紹介します。
- 規則正しい生活を送る
- 適度に運動する
- 体を冷やさない
- こまめにストレスを発散する
- 栄養バランスの良い食事をする
一見当たり前のように思えるポイントですが、どれも妊娠率を上げるためには欠かせないものです。それぞれのポイントについて、なぜ重要なのかを順番に確認していきましょう。
規則正しい生活を送る
1つ目は「規則正しい生活を送る」ことです。
規則正しい生活を送ることは、体内のホルモンバランスを整えるために欠かせません。特に、睡眠は体の回復に必要不可欠であり、妊娠しやすい体作りの基礎でもあります。
不規則な生活や寝不足はストレスや体調不良を引き起こし、ホルモン分泌に悪影響を与えます。仕事や育児などで思うように生活リズムが整わない場合もありますが、できる範囲で意識してみてくださいね。
適度に運動する
2つ目は「適度に運動する」ことです。
適度な運動は妊娠率を上げるための大切な要素です。軽い有酸素運動やストレッチを日常に取り入れると血行が促進され、生殖機能が活発になります。
また、運動にはホルモンバランスを整える効果もあるので、ストレス解消や気分転換にも役立ちます。ウォーキングやヨガ、ストレッチなどを続けることで、妊娠しやすい健康な体を維持してくださいね。
体を冷やさない
3つ目は「体を冷やさない」ことです。
女性ホルモンは、体の冷えによって乱れることがあります。特に、下半身やお腹が冷えると、血行が悪くなり、卵巣や子宮の働きが低下する可能性もあるのです。
冷えを防ぐためには、温かい服装を選んだり、フットウォーマーなどの温活グッズを使ったりするのがおすすめです。また、お風呂で体を温めることも血行を良くし、冷えを解消するのに役立ちますよ。
体を冷やさないように意識すれば、妊娠率を上げるだけではなく、健康的な体を作ることもできます。冷え性を自覚している方は、下半身の温めを特に意識してみてくださいね!
こまめにストレスを発散する
4つ目は「こまめにストレスを発散する」ことです。
過度なストレスは自律神経やホルモンバランスの乱れ、卵巣の血流の悪化に繋がります。ストレスを感じた時は無理をせず、好きな音楽や入浴でリラックスし、深呼吸や趣味で気分転換を心がけましょう。
また、リフレッシュを「やらなければいけないこと」にはせず、自分のペースで取り入れることも大切です。週末や仕事終わりに好きな時間を設けて、ストレスを溜め込まないようにしてくださいね。
栄養バランスの良い食事をする
5つ目は「栄養バランスの良い食事をする」ことです。
糖質や脂質の過剰摂取は、体調や卵子の状態に影響する可能性もあります。妊活・不妊治療の期間中は、ビタミンA・C・Eなど抗酸化作用のある栄養素を意識して摂るのがおすすめです。
ビタミンAはレバーや緑黄色野菜、ビタミンCは赤パプリカやキウイ、ビタミンEはアボカドやナッツ類に多く含まれていますよ。
とはいえ、栄養バランスを意識しすぎた結果、食事でストレスを溜めるのは良いことではありません。まずは普段より野菜や果物を多めに取り入れ、塩分・糖分を摂りすぎないよう意識するところから始めてみてくださいね。
35歳の妊娠率・不妊治療に関する質問
35歳の妊娠率は何%?不妊治療の成功率も解説【まとめ】
35歳を過ぎると、妊娠のしやすさに変化が現れると言われていますが、それは決して「もう妊娠できない」という意味ではありません。
年齢に応じた体の変化を理解し、早めに行動を始めれば、妊娠の可能性を高めることは十分に可能です。
まずは、産婦人科や不妊専門のクリニックで検査を受け、ご自身の体の状態を確認してみましょう。
また、規則正しい生活や適度な運動、栄養バランスの整った食事など、日々の習慣を見直すことも妊娠しやすい体作りに繋がります。
妊活・不妊治療を始めるタイミングに迷いがある方は、本記事で紹介したポイントを参考に、焦らずご自身のペースで一歩を踏み出してみてくださいね。