男性不妊検査・精液検査はどこで?やり方・採取方法&保険適用も解説

男性不妊検査はどこで受けられる?

不妊とは、妊娠を望んでいる健康な男女が避妊をせず性交しているにもかかわらず、約1年の間に妊娠しないことを指します。こういった不妊や不妊治療に関わる悩みは、日本だけでなく世界中で多くの方が抱えているのです。

不妊の原因は男性・女性共に半々です。特に男性の場合、不妊症であっても自覚症状はほとんどないため、男性不妊検査(精液検査)を受けて初めて不妊症が発覚するケースも多く報告されています。

本記事では、そんな男性不妊が起こる原因や検査・治療の方法をタイミングや費用も含めて解説していきます。検査を受けられる場所も紹介しているので、是非参考にしてみてくださいね。

目次

男性不妊検査・精液検査(精子検査)はどこで受けられる?

男性不妊の検査は、泌尿器科・不妊症外来で受けることが可能です。

多くの泌尿器科はブライダルチェックの一環として性感染症やホルモン値の検査、精液検査をセットで行っています。そのため、男性不妊検査をするなら「泌尿器科でチェック→異常があれば不妊症外来」という順番でも問題ないのです。

男性不妊の検査や診療に対して不安に感じる方、検査に行くのが恥ずかしいと思う方も多いかもしれませんが、検査をすることで大きな病気を見つける可能性もあります。

男性不妊は決して珍しいこと、恥ずかしいことではありません。1年経っても妊娠の兆しがない場合は精液検査を行い、不妊治療を進めていきましょう。

男性不妊の検査はどこで?男性不妊症の治療は原因によって変わる

男性不妊症は、主に不妊治療のクリニックもしくは泌尿器科で治療が行われます。治療方法は、以下の原因によって異なるため、まずは男性不妊症の原因について簡単に確認していきましょう。

  • 造精機能障害
  • 性機能障害
  • 精路通過障害

それぞれの症状について順番に解説していきます。

造精機能障害

造精機能障害とは、精子を作る過程で何らかの障害が起こっている状態のことを指します。

男性不妊の原因の内、全体の82.4%を占めるのがこの造精機能障害であり、症状が進むと乏精子症(濃度の低下)、無精子症(精子がいなくなる)、精子無力症(運動率の低下)が起こるのです。

造精機能障害には先天性と後天性がありますが、原因不明の場合が半数以上を占めており、「突発性造精機能障害」と呼ばれます。その他、造精機能障害が起こる原因としては、精索静脈瘤、クラインフェルター症候群、停留精巣などが挙げられます。

なお、造精機能障害が原因不明で発症した場合でも、生活習慣の改善や漢方を使用した治療で症状が改善されることもあります。高齢になるにつれて造精機能は低下するので、気になる方は早めに男性不妊検査に行ってみましょう。

性機能障害

性機能障害とは勃起しない、もしくは射精できない状態のことを指します。

性機能障害が起こる原因の多くは、心因性のものだと言われています。性行為そのものにプレッシャーやストレスを感じたり、妊娠に対して恐れを感じていたりする場合、性機能障害になってしまうケースが多く報告されているのです。

また、性機能障害は糖尿病、動脈硬化症、高血圧症といった血液循環や神経の問題が原因となっている場合も存在します。

性機能障害が疑われる場合はバイアグラなど勃起不全の治療薬が処方されますが、それらの薬を服用しても症状が改善されない場合は必ず専門医に相談するようにしてください。

精路通過障害

精路通過障害とは、精子が作られているにもかかわらず、何らかの異常で精子が出ない状態のことを指します。

精液は精子と精嚢、前立腺の分泌液から成り立っているため、精路通過障害の場合も射精自体は可能です。そのため、精液検査をするまでは精子が出ていないという自覚もなく、自身が不妊症であることに気付けません。

精路通過障害が起こる原因としては、先天性のものや逆行性射精などが考えられます。いずれにせよ、不妊に悩んでいる場合は早めに受診し、検査を受けるようにしましょう。

男性不妊の検査とは?

男性不妊の検査では、主に以下の検査が行われます。

  • 精液検査
  • 泌尿器科的検査

それぞれの検査について順番に確認していきましょう。

精液検査(精子検査)とは?結果の見方も解説

精液検査とは、精液量、濃度、運動率、精子の形態などを調べる検査のことです。男性不妊症を判断するほか、治療の必要性を調査することを目的として行われます。

通常、精液検査はWHOが公表している精液検査正常値(2021年改定)に則って診断されます。具体的な基準値は下記の通りです。

検査項目基準値
精液量1.4mL以上
精子濃度1600万/mL以上
運動率42%以上
総運動精子数(精液量×精子濃度×運動率)1638万以上
正常形態率4%以上(奇形率96%未満)
※検査値が正常であっても、精索静脈瘤があると妊娠しない可能性があります。

上記の基準値を下回っている場合、精子に何らかの異常があり、自然妊娠は難しいと判断されます。とはいえ、基準値以下でも妊娠の可能性が0というわけではありません。あくまで目安の1つとして考えるようにしてください。

ここからは、精液検査を行うタイミングや全体の流れ、費用などを詳しく見ていきましょう。

精液検査(精子検査)のタイミング

精液検査は、1年間性交を試みても妊娠しない時に行うことをおすすめします。

不妊に悩んでいる場合、まずは女性側が1人で不妊検査を受けることが多いですが、不妊治療を始めると決めたのであれば、男性側も不妊検査を行い、女性と並行して治療を受けるのが望ましいです。

精子の質は加齢によって低下し、年齢を重ねるごと妊娠は難しくなっていきます。精液所見は長い時間をかけて改善されるため、妊娠を望むなら早めに受診し、治療することが大切です。

精液検査はパートナーがいない方でも受けられます。将来子どもが欲しい方、ご自身の生殖能力を検査したい方は精液検査を行っているお近くの医療機関にご予約ください。

精液検査(精子検査)のやり方・採取方法

精液検査は自宅もしくは医療機関内にてマスターベーションを行い、採取した精液を検体として提出します。検査結果が説明されるまでの流れは以下の通りです。

  1. 医療機関に予約
    → 医療機関に精液検査を予約します。予約不要の医療機関もありますが、基本的には予約が必要です。
  2. 受診
    → 医療機関を受診し、医師から説明を受けます。自宅で精液を採取する場合は、専用の精液採取容器を受け取りましょう。
  3. 自宅もしくは医療機関で精液を採取・提出
    → 自宅でマスターベーションを行う場合は、1回分の精液を採取し、2時間以内に医療機関に提出します。採精室がある医療機関の場合は、医療機関内で精液を採取・提出することも可能です。
  4. 検査結果の説明
    → 約30分から2時間で精液検査の結果は判明します。医療機関を受診し、医師から説明を受けましょう。当日結果を確認する場合は外出可能な医療機関も多いため、事前に確認しておくことをおすすめします。

このように、精液検査は早ければ当日、遅くとも2回の受診で結果が分かります。精液検査をする際は2~3日程度禁欲するとともに、健康状態にも注意しておきましょう。

精液検査(精子検査)にかかる費用

精液検査はスクリーニング検査の一種なので、ほとんどの場合は保険適用外となります。検査費用は各医療機関ごとに異なりますが、一般的には初診料も含めて5,000円程度で検査することが可能です。

なお、結婚・事実婚をしており、男性側の不妊が疑われている場合は保険が適用されるケースもあります。その場合は費用を抑えて受診できるため、該当する方は事前に保険適用で検査できるクリニックを探してみると良いでしょう。

泌尿器科的検査

泌尿器科的検査では、診察・エコー検査・採血などを通して不妊症に関連する病気や精索静脈瘤の有無などを判断します。

精索静脈瘤は男性ホルモンの低下、精子のDNA損傷などの原因にもなるため、しっかりと検査を行い、治療を受けることが大切です。

超音波(エコー)検査

超音波検査では陰嚢にエコープローブを当てて陰嚢・精索・精巣を観察します。触診に比べて違和感のない検査かつ、精索静脈瘤の診断に最も有効な方法です。

また、超音波検査ではときどき精巣がんが発見されることもあります。精巣がんは進行が早く、比較的早い時期に転移するため、腹痛や腰痛、呼吸困難、首のリンパ節の腫れなどで気付く場合もあるようです。

不妊症、精巣がんはどちらも早期発見・早期治療が重要です。少しでも違和感を感じたら早めにお近くの泌尿器科を受診するようにしてください。

内分泌検査(採血)

内分泌検査では、採決で男性ホルモン(テストステロン)、性腺刺激ホルモン(LH、FSH)、場合によってはプロラクチンなどを調べます。この検査によって精液以上の原因を判断することが可能です。

また、内分泌検査は性機能障害(勃起障害・射精障害)がある場合に有効な検査方法の1つです。性機能障害は心理的な要因で起こることがほとんどですが、身体的要因で起こることもあります。

染色体・遺伝子検査(採血)

染色体・遺伝子検査は精子が極端に少ない、もしくは無精子症と判断された場合に行われる検査です。

遺伝的な男性不妊症の場合、原因として最も多いのが余分なX染色体を持つ場合に発生する「クラインフェルター症候群」です。そして、次に多いのがY染色体のAZFという領域が欠けている「Y染色体微小欠失」と言われています。

染色体異常は決して珍しい病気ではありません。まずは医師から十分な説明・カウンセリングを受け、治療を進めていきましょう。

男性不妊の治療

男性不妊の場合は、原因に応じて内科的治療(薬物療法)や外科的治療(手術)が行われます。

例えば、性機能障害であった場合は抗うつ薬や勃起不全の治療薬の処方、あるいは人工授精を行います。一方、精索静脈瘤がある場合は手術を行い、精子形成能の改善を図るのです。

このように、男性不妊の治療は多岐にわたります。症状が軽度であれば、生活習慣の見直しによって男性不妊が改善されるケースもあるため、治療と並行して生活習慣に少しでも注意を向けてみると良いでしょう。

精液検査(精子検査)の費用は保険適用になる?

精液検査は基本的に無症状の方を対象とした検査であるため、多くの医療機関では保険適用外となり、自費診療となります。

費用は医療機関によって異なりますが、一般的には5,000円前後が目安です。

また、精液検査を受けるには事前に感染症検査を行い、その結果を確認してからの実施となります。感染症の結果が出るまでには通常1週間ほどかかるので、結果を受け取るタイミングで、精液検査の予約を同時に行うとスムーズですよ。

なお、精液検査の当日は、精液を提出してから1時間~1時間半ほどで医師より結果が伝えられます。初診料や再診料、感染症検査費も含めた全体の費用は、トータルで1万円前後かかると想定しておきましょう。

男性不妊検査・精液検査(精子検査)はどこで受ける?よくある質問

不妊症は男でもなるのでしょうか?

はい、不妊の原因は約50%が男性側にあるとされており、決して女性だけの問題ではありません。不妊症は自分だけでは気付きにくいため、1年経っても妊娠しない場合は不妊検査を受けることをおすすめします。

妊娠出来るかを調べるための検査には、どのような種類がありますか?

妊娠できるかどうかを調べる際には、男女それぞれに必要な検査が異なります。女性の場合はホルモン検査や超音波検査、男性の場合は精液検査を行うのが一般的です。

精子がどのような状態だと不妊症と判断されるのですか?

そもそも精子が作り出せない、数が少ない、精子の通り道が塞がれているという状態であると、男性不妊症と判断されます。要因は様々ですが、いずれも服薬や手術によって症状が改善されるケースが多いため、異常がある場合は担当医に相談してみましょう。

精液検査はどこで受けられますか?

精液検査は大学病院、総合病院、一般病院、不妊治療専門医院などで受けることができます。

精液検査ができるのは病院の何科ですか?

精液検査ができるのは産婦人科、泌尿器科です。

男性不妊検査・精液検査は泌尿器科でも行っていますか?

はい、泌尿器科でも男性不妊検査を行うことは可能です。ただし、すべての医療機関が対応しているわけではないため、事前に確認しておくことをおすすめします。

不妊検査だけしたいのですが、男性の場合は費用はいくらくらいかかりますか?

医療機関や検査内容によっても異なりますが、一般的には5,500円程度で精液検査を受けることができます。より高度な検査を行う場合は、15,000円程度の費用を想定しておくと良いでしょう。

産婦人科は男性でも受診できますか?

男性が入れないクリニックもありますが、泌尿器科の外来がある産婦人科であれば基本的に男性でも受診可能です。婦人科によっては男性不妊外来を設けている場所もあるため、事前に確認し、不安な点があれば問い合わせするのが良いでしょう。

男性不妊検査・精液検査に行くのが恥ずかしいです。どうしても婦人科に行かなければなりませんか?

いいえ、男性不妊検査は産婦人科でなくとも受けられます。男性不妊を専門に取り扱っているクリニックや泌尿器科でも検査・診察は可能なので、そういったところを受診するのも一つの手です。

男性でもブライダルチェックはするべきですか?

将来的に子どもが欲しい方、性感染症をチェックしたい方、結婚を控えている方であれば、男女問わず積極的にブライダルチェックを受けることを強くおすすめします。

男性不妊になりやすい人はどんな見た目・特徴がありますか?

男性不妊になりやすい方の特徴としては、「陰嚢・精液の見た目に異常や違和感がある」「喫煙者」「サウナ・長風呂が好き」といったことが挙げられます。

無精子症の検査にはどのようなものがありますか?

無精子症の検査としては精液検査、ホルモン検査、染色体・遺伝子検査などが行われます。

男性不妊症をセルフチェックする方法はありますか?

男性不妊症をチェックするなら検査を受けるのが確実です。セルフチェックもできないことはありませんが、自覚症状が薄い場合は発見が難しいため、やはり一度精液検査を行うことをおすすめします。

男性不妊検査は保険適用ですか?

スクリーニング検査の場合は保険適用外ですが、結婚・事実婚をしていて男性の不妊が疑われている場合は保険適用となる場合もあります。

採精のやり方を教えてください。

採精する際は、禁欲期間を守り、清潔な状態で専用の容器に精液を採取します。コンドームや性行為による採取は基本的にNGです。採取後はすぐに容器に蓋をして、速やかに病院に提出しましょう。

妊活で男性が注意すべき点はありますか?

妊活を始める場合、男性は飲酒・喫煙を控え、適度な運動とバランスのとれた食事を行うことが大切です。また、早めに精液検査を受け、体に異常がないかを確認するようにしましょう。

射精障害の治療方法としてはどのようなものがありますか?

射精障害の治療方法としては、心因性であると判断された場合はカウンセリングや生活習慣の見直し、身体的な原因があると判断された場合は服薬治療が行われます。また、膣内射精が困難で精液採取が難しい際は、電気射精法や膀胱内精子回収法といった方法で精子を取り出し、人工授精や体外受精に進むこともあります。

精液量の測り方を教えてください。

精液量の測定方法としては、医療機関から渡される容器の目盛りで確認するのが一般的です。通常の精液量は、約1.5~6.0mLとされています。

不妊治療は男性も対象|不妊検査・精液検査はどこで受けられる?【まとめ】

不妊の原因は必ずしも女性だけにあるわけではありません。男性側にも原因がある場合は多いため、積極的に不妊検査やブライダルチェックをすることをおすすめします。

不妊検査は産婦人科だけでなく、泌尿器科や不妊治療専門医院でも受けられます。男性不妊には大きな病気が隠されているケースもあるので、検査を受けて損はありません。

また、男性不妊症は症状に応じて様々な治療方法が確立されています。将来後悔しないためにも、まずは一度検査を受けてみてはいかがでしょうか。

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